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次世代リーダー育成のためのクロスメンタリングとグループメンタリング:効果的な導入と運用ガイド

Tags: メンターシップ, 次世代リーダー育成, 人材開発, クロスメンタリング, グループメンタリング, 組織開発

従来のメンターシップの課題と新しい形態の必要性

多くの企業で人材開発プログラムの中核として位置づけられているメンターシップは、次世代リーダー育成においてもその有効性が広く認識されています。しかしながら、長年運用されてきた1対1のメンターシッププログラムにおいて、以下のような課題に直面している人事・人材開発担当者の方々も少なくありません。

これらの課題を克服し、変化の速い現代において求められる多様なスキルや視点を持つ次世代リーダーを育成するためには、従来の1対1メンターシップに加えて、あるいは代替として、新しい形態のメンターシップを検討することが有効です。その中でも特に注目されているのが、「クロスメンタリング」と「グループメンタリング」です。これらのアプローチは、従来の課題に対し異なる角度からの解決策を提示し、メンターシッププログラム全体の活性化に貢献する可能性を秘めています。

本記事では、次世代リーダー育成の文脈におけるクロスメンタリングとグループメンタリングの有効性に焦点を当て、それぞれの特徴、導入におけるメリットとデメリット、そして効果的な設計・運用のための実践的なポイントを解説します。

クロスメンタリング:組織の壁を超えた学びの機会

クロスメンタリングとは、所属する部署や部門、あるいは階層を超えて行われるメンターシップの形態です。通常のメンターシップでは、同部門内の先輩社員がメンターとなることが多いですが、クロスメンタリングでは全く異なる業務や文化を持つ部署の経験者がメンターとなります。

クロスメンタリングが次世代リーダー育成に有効な理由

  1. 視点の拡大と多様な知識の獲得: メンティーは自身の専門領域とは異なる分野の視点や知識に触れることで、多角的かつ複合的な思考力を養うことができます。これは、複雑なビジネス環境で意思決定を行う次世代リーダーにとって不可欠な能力です。
  2. 組織内ネットワークの構築: 普段接点のない部署との関係性を構築することで、組織全体の構造理解が進み、部門間の連携を円滑にする人的ネットワークを築くことができます。
  3. サイロ化の解消: 部署間の壁を取り払い、組織全体の共通目標達成に向けた意識を高める効果が期待できます。
  4. 客観的なキャリアアドバイス: メンティーの所属部署のしがらみにとらわれない、より客観的かつ広範な視点からのキャリアやスキル開発に関するアドバイスを得やすくなります。
  5. メンター層の拡大: 特定部署に依存せず、組織全体から最適なメンター候補者を選定できるため、適切なマッチングの可能性が広がります。

導入におけるメリット・デメリット

メリット:

デメリット:

効果的な設計・運用のポイント

グループメンタリング:ピアラーニングと多様な知見の融合

グループメンタリングは、一人のメンターに対して複数のメンティーがつく形態、あるいは複数のメンターと複数のメンティーが共に学ぶ形態を指します。特定のテーマや目的を持ったグループを形成し、定期的なセッションを通じて学習を進めます。

グループメンタリングが次世代リーダー育成に有効な理由

  1. ピアラーニングの促進: メンティー同士が互いの経験や課題を共有し、学び合う「ピアラーニング」が自然発生的に生まれます。これにより、メンターからの学びだけでなく、多様な視点からの学びが得られます。
  2. 効率的な知識伝達: 一人のメンターが複数のメンティーに対して同時に指導できるため、効率的に経験や知識を伝達することが可能です。特に共通の課題やテーマを持つメンティーが多い場合に有効です。
  3. 安心感と心理的安全性: 同じような立場や課題を持つメンティーが集まることで、心理的な安心感が生まれやすくなります。これにより、一人では相談しにくかった悩みや課題もオープンに共有しやすくなります。
  4. 多様な視点からのインサイト: 複数のメンティーからの質問や議論を通じて、メンターも自身の経験を多角的に振り返り、新たなインサイトを得ることがあります。
  5. 組織文化の共有と浸透: 共通のテーマに基づいた議論を通じて、組織の価値観や期待される行動様式を複数人で共有し、より深く浸透させることができます。

導入におけるメリット・デメリット

メリット:

デメリット:

効果的な設計・運用のポイント

クロスメンタリングとグループメンタリングの使い分け、あるいは組み合わせ

クロスメンタリングとグループメンタリングは、それぞれ異なる強みを持っています。どちらの形態がより効果的かは、育成したいリーダー像、メンティーの人数やニーズ、組織の文化、利用可能なリソースなどによって異なります。

また、これら二つの形態を組み合わせたハイブリッド型メンターシップも有効です。例えば、基本的な知識やスキルはグループメンタリングで効率的に学び、個別のキャリアに関する悩みや部門横断的な課題についてはクロスメンタリングで対応するなど、目的に応じて柔軟に設計することが可能です。

まとめ:次世代リーダー育成におけるメンターシップの進化

次世代リーダーに求められる能力が高度化・多様化する中で、メンターシッププログラムもまた進化が求められています。クロスメンタリングやグループメンタリングといった新しい形態は、従来の1対1メンターシップが抱える課題を克服し、より多くの従業員に質の高い学びの機会を提供するための有力な選択肢となります。

これらの新しいアプローチを導入する際は、プログラムの目的を明確にし、参加者への丁寧なオリエンテーションと研修を実施し、そして運営事務局が継続的なサポートを行うことが成功の鍵となります。また、クロスメンタリングにおける部門間の連携促進や、グループメンタリングにおけるピアラーニングの効果など、それぞれの形式ならではの評価指標を検討することも重要です。

貴社の次世代リーダー育成戦略において、クロスメンタリングやグループメンタリングの導入を検討してみてはいかがでしょうか。これらの新しい試みが、組織全体の活性化と持続的な成長に繋がることを願っております。